ティル・オイレンシュピーゲル“馬車よ、ゆっくり走れ”
馬車である大きな町に向かって旅をしている男が、道の途中の村で尋ねたんだ、相手がティル・オイレンシュピーゲルとも知らないでね。
“日暮れまでに町に着けるかね?”
旅人と馬車をかわるがわる見て、ティルが答えた、
“そうさねぇ、もう日も傾いて来たしね、お前さん、ゆっくり行くんなら着けるだろうよ。でも急いだら明日になるね。”
旅人はからかわれてると思って腹を立てて、馬に鞭を当てて一気に走り出したんだよ。
“そんな馬鹿なことがあるもんか。ゆっくり行っても着くんなら、走りゃすぐじゃないか。”
馬車は走っていくうちに、まだあまり村から遠くないところで急に車輪がはずれて、旅人は道端の溝に転げ落ちてしまったんだ。
旅人はびしょぬれになって、しかも馬車を修理するにはまた村まで戻らなくちゃいけない。
車輪を馬車に積んで、壊れた馬車を支えながら、ようやくのことで戻ったのはもう夜。
宿を探して泊まり、朝になって馬車屋に行くと、またあのティルがそこにいて、
“お前さんまだここに居るのかい?やれやれ、だから云わんこっちゃない、ゆっくり用心して走ってりゃとっくに町に着いてただろうに。”
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